「年のせい」と「整っていないだけ」は違う

40代、50代になって疲れが抜けにくくなった。以前より踏ん張りが利かなくなった。無理をすると翌日に響くようになった。そう感じたとき、多くの経営者が「年のせいだから仕方ない」と口にします。

整形外科医として外来で、この言葉を何度も聞いてきました。ですが、その中身を分けて見ると、年齢そのものによる変化と、単に状態が整っていないだけの部分が混ざっていることが多いのです。

加齢による変化は、確かにある

まず正直に書きます。年齢を重ねることで起きる体の変化は、確かに存在します。若い頃と同じ回復スピード、同じ無理は利かなくなっていく。これは戻せるものではなく、僕自身も年齢とともに実感していることです。

その事実から目をそらすつもりはありません。加齢そのものを否定する話ではないのです。回復にかかる時間が少しずつ延びていく、無理をした翌日への影響が大きくなる、といった変化は、多くの方に共通して起こることだと僕は見ています。

それとは別に、「整っていないだけ」の部分がある

一方で、外来で「年のせい」と語る方を診ていくと、加齢だけでは説明がつかない部分が見つかることが少なくありませんでした。

睡眠、食事、運動、自律神経、環境。コンディションのこの5つの要素のどこかが崩れたまま、長い間放置されている。その結果を、まとめて「年齢」という言葉で受け止めてしまっているケースです。

たとえば、睡眠時間が短いまま何年も働き続けてきた方。食事の時間がバラバラで、同じものばかり口にしてきた方。忙しさを理由に、体を動かす習慣を手放してしまった方。こうした積み重ねは、年齢のグラフとほぼ同じ形で進んでいくため、本人には「年のせい」と同じ感覚で映ります。年齢による変化と、整っていないことによる不調は、体感としてはよく似ているのです。だからこそ、混ざったまま扱われやすいのだと僕は見ています。

長時間の会議で集中力が続かない、週の後半になると判断が雑になる。こうした変化も、加齢そのものというより、日々のコンディションの崩れが影響している場合が少なくないと僕は見ています。

混同すると、あきらめなくていいものまであきらめる

この2つを分けずに「年のせい」でまとめてしまうと、何が起きるか。本来なら整えれば変わる部分まで、あきらめの対象になってしまいます。逆に、加齢によるものまで「まだいける」と無理を重ねれば、体に負担がかかります。

経営者にとって、これは他人事ではありません。まだ立て直せる部分を「年齢だから仕方ない」と見切ってしまえば、体だけでなく、日々の判断や仕事のやり方にも影響していきます。逆に、加齢による変化まで気力だけで押し切ろうとすれば、回復が追いつかなくなることもあります。どちらの方向にも、行き過ぎれば無理が出るということです。

大切なのは、どちらか一方に決めつけないことです。最近になって出てきた不調なのか、何年も前からの変化なのか。生活のどこかが崩れてから始まったのか、それとも徐々に進んできたのか。そうした経過を丁寧に振り返ることが、切り分けの入り口になると僕は考えています。

5つの要素をひとつずつ振り返ってみるのも、ひとつのやり方です。ここ数年、睡眠は削られていないか。食事は変わっていないか。体を動かす機会は減っていないか。ストレスを感じる場面は増えていないか。働く環境そのものに、変化はなかったか。心当たりのある要素があれば、それは年齢とは別に、整え直せる部分かもしれません。

年齢のせいか、それとも整っていないだけなのか。この判断を、不調が出るたびにゼロから考えるのは、実際には難しいものです。

僕がすすめたいのは、自分の体がどんな状態のときに、どんな不調として現れやすいかという「パターン」を、ある程度知っておくことです。睡眠が崩れたときに真っ先に出る症状。食事が乱れたときに感じる変化。忙しさが続いたときに、決まって崩れる部分。そうしたパターンが見えてくると、不調が出たときに「今回はどちらだろう」と、落ち着いて振り返れるようになります。

1回きりの体調不良で結論づけるのではなく、自分なりのパターンを積み重ねていく。それが、年齢のせいにしない体との付き合い方だと僕は考えています。

年齢のせいにする前に

年齢のせいにすれば、判断は楽になります。ですが、それで思考を止めてしまうのはもったいないと僕は思っています。

まずは、自分の状態のどこが整っていて、どこが崩れているのかを見ていく。そこに、まだ手を打てる余地が残っているかもしれません。その先に、これからも挑戦を続けられるかどうかの差が出てくると、僕は考えています。

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※この記事は一般的な考え方の紹介であり、医療行為(診断・治療)ではありません。体調に不安のある方は医療機関にご相談ください。

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