寝ても抜けない疲れ――時間ではなく、切り替えの問題

睡眠時間はちゃんと確保しているのに、朝起きても疲れが抜けていない。経営者の方々の状態(コンディション)を見ていると、そういう相談に触れることが少なくありません。

睡眠時間を足しても、質を変えても、それだけでは説明がつかない疲れがある。僕はこれを、時間の問題ではなく、切り替えの問題として見ています。

経営者の方は特に、仕事とプライベートの境目が曖昧になりやすい立場です。移動中にメールを返し、食事をしながら考え事をし、休みの日にも次の判断が頭の片隅に残っている。緊張したままの時間が長くなるほど、体は緩むタイミングを見失っていきます。

時間を確保しても、疲れが抜けない理由

体には、緊張する状態と緩む状態を行き来する働きがあります。自律神経と呼ばれる仕組みです。日中は交感神経が優位になって集中や判断を支え、夜になると副交感神経が優位になって回復のモードに入っていく。この切り替えがうまく働いていれば、横になったときに体は自然と休む方向に進みます。

ところが、日中ずっと緊張が続いたまま夜を迎えると、体は緩む合図をうまく受け取れません。布団に入っても頭が働き続けていたり、眠れても浅い眠りが続いたりする。時間としては眠っているのに、回復に入れていない状態です。睡眠時間を延ばしても疲れが取れないと感じるとき、僕はまずこの切り替えがどこかで詰まっていないかを見るようにしています。

午後の集中力低下や、調子の波も同じ根っこ

「午後になると集中力が続かない」「調子(気分)の波が大きい」というのも、根っこは同じところにあると僕は見ています。

緊張したままの状態が続くと、体は常にアクセルを踏んでいるような状態になります。アクセルを踏み続ければ、途中でガス欠のように失速する瞬間が来る。午前中は動けても、午後にがくっと集中が切れるのは、切り替えのないままエネルギーを使い切っているサインかもしれません。

調子の波についても同じです。緊張と緩和のスイッチが自分の意思とは関係なく不規則に入れ替わると、気分や集中力も日によって大きく揺れます。波が大きいこと自体を責める必要はなく、切り替えの癖を整えることで、揺れ方が少しずつ変わっていくというのが僕の見方です。

切り替えの癖は、夜ではなく日中で決まる

夜にどれだけ入念な準備をしても、日中ずっと緊張しっぱなしだった体は、急には緩みません。切り替えの癖は、夜につくるものではなく、日中の過ごし方の積み重ねでつくられていきます。

例えば、会議と会議の間に何もせず次の予定に入るのではなく、数十秒でも肩の力を抜いて息を吐く時間を挟む。パソコンの画面を見続けるのではなく、数分だけ外の光を見る。昼食の時間を作業をしながら済ませず、食べることに意識を向ける。どれも小さな行動ですが、日中に緩む瞬間を何度か作っておくことが、夜の切り替えにつながっていきます。

疲れが抜けないと感じたとき、睡眠時間を削って仕事を増やす方向に行きがちですが、僕はまず日中の緊張のかけ方を見直すところから始めています。

自分の切り替えの癖に、まず気づく

切り替えが苦手な人ほど、自分がずっと緊張していることに気づいていません。集中している自覚があるだけで、体がアクセルを踏みっぱなしだという感覚は薄いものです。

僕が経営者の方々の状態を見るときにまず確認するのは、1日の中でどこに緩む瞬間があるかです。会議と会議の間、移動の時間、昼食の時間。そこが全部次の仕事の準備に使われていると、日中に緩む機会がほとんどないまま夜を迎えることになります。

予定表を開いて、隙間の時間に何が入っているかを見てみるだけでも気づきがあります。次の会議の資料確認、返信待ちのメールの処理、移動中の電話。悪いことではありませんが、それが1日中続くと、緩む役割を持つ時間がどこにも残っていないことになります。

睡眠の質を上げようとして寝具や照明を変える前に、日中のどこかに数十秒でも緩む瞬間を挟めているかを、まず振り返ってみてほしいと思います。時間を増やすことよりも、切り替えの回数を増やすことのほうが、抜けない疲れには効いてくると僕は見ています。

体には、睡眠、食事、運動、自律神経の働き、置かれている環境という、いくつもの要素が重なっています。睡眠時間だけを見て解決しようとすると、切り替えという別の要素が抜け落ちてしまう。疲れが取れないと感じたら、時間の長さだけでなく、日中どこで緊張が続いていたかにも目を向けてみると、見えてくるものがあります。

自分では気づきにくい部分なので、自分の状態を睡眠・食事・運動・自律神経・環境という切り口で確認したい方には、3分コンディションチェックも用意しています。どこに緊張が偏っているかを見直す、1つのきっかけにしてもらえたらと思います。

※この記事は一般的な考え方の紹介であり、医療行為(診断・治療)ではありません。体調に不安のある方は医療機関にご相談ください。

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